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Not if, but how
Abstract geometric wire-frame data landscape.
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サイバー保険販売戦略に基づく知識の構築

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    新しい年代に入りましたが、サイバーリスクは依然として、政策立案者、企業、個人に重くのしかかる課題です。これは新しさと複雑さ、それを取り巻く状況の急激な変化のせいで、アジアの保険会社にとって、既存のチャネルに統合するのが難しい商品です。

    効果的な販売戦略を用いれば、これらの難題を競争の優位性に変えることができますが、それには、進化するサイバーリスクの状況をよく理解した上で戦略を立てる必要があります。

    この地域のサイバー脅威は増え続けています。アジア太平洋地域でのマルウェアのリスクは世界平均と比べて37%、ランサムウェアの発生率は40%高くなっています。現在この2つの脅威の発生数が最も高いのが東南アジアです。[Microsoft Security Intelligence Report Volume 24]

    この現実が、変化の激しい規制と相まって、この地域の個人や小企業、大企業、政府の間に、教育ならびに関連するサイバー問題のソリューションに対する需要を促進するとみられています。

    サイバー保険を保険会社のポートフォリオに導入するには、現地の法環境をすりぬけ、累積管理の枠組みを作り、価格設定エンジンと引受ガイドラインを確立し、そして何よりも、確固たる販売戦略を実施することが必要になります。

    すべての市場には独自のメカニズムとサイバー成熟度、そして商品要件があり、それらを以下の4つのコンポーネントと組み合わせて考慮し、知識中心の優れた販売戦略を作り上げる必要があります。

    1. ソリューションの提供

      優れた販売インフラストラクチャの重要な部分は、市場環境に合わせた適切な保障範囲です。対物損害保険のように、損害が目に見え、予想可能である従来の保険商品と比べて、新しいサイバー商品は一般的にもっと抽象的です。結果として、引受プロセスと保険契約証書の文言を、顧客に意味がわかる、シンプルなものにする必要があります。このアプローチのエビデンスは、当社の中小企業向け事前引受済み商品への需要に見られます。

      考慮すべきもう一つの重要な分野は、保険金請求インシデントへの対応管理です。この能力は、サイバー保険を購入する強い理由となるため、重要な販売コンポーネントとなっています。

    2. 販売チャネル

      販売の促進は、ブローカー、オンラインチャネル、外務員など、様々な流通チャネルを通じて行われます。サイバー保険の課題の1つは、保険会社が複雑な技術的知識を販売チャネルの混合体へ迅速に組み込む必要があることです。当社の経験から見ると、成功する戦略は、この目的のために新しい販売チャネルに乗り出すのではなく、会社の確立された販売チャネルとてこ入れした効率に基づいています。

    3. 人員

      アジアでは外交員が引き続き主力のチャネルです。ソリューション商品を推進し、売り込むために、外交員が確実に教育を受け、やる気を持ち、サポートを受けるようにすることが重要な優先事項です。また、他の確立された取扱商品と「同等」のものだと考えられるよう、サイバーソリューションを代理店の中心商品と統合することも、この事業分野の信用と価値を達成するために重要です。

    4. テクノロジー

      テクノロジーの役割も非常に重要です。例えば、当社は自動引受エンジンを導入しました。これには国別の要素を入力し、ブローカー、販売代理店、直接顧客の流通チャネルに組み込むことができます。この種のソリューションは、数百の販売代理店に必要な情報を与え、ブローカーとともに直接相乗効果のあるソリューションを実施することができるよう設計することが可能です。

      まとめると、サイバー保険のような新しい保険商品を組み込むには、市場の理解、認識の促進、そして保険バリューチェーンの関係者に正しい情報とツールを持たせることに対する、多大な尽力と知識の適応が必要だということです。

      販売戦略の4つのコンポーネント(ソリューションの提供、販売チャネル、人員、テクノロジー)のバランスをうまく取ることにより、保険会社は正しいパートナーシップを作り出す良い位置につき、増大しつつあるサイバー商品への需要に応え、ますます広がる脅威と規制変更という課題に取り組むことができるでしょう。

      Munich Reの顧客は、120人を超えるサイバー専門家を擁する当社のグローバルネットワークを活用して、強力な商品内容、文言、価格設定、マーケティング、事業計画支援をベースとした戦略作りを行うことができます。また、APIを介して搭載可能な自動引受プラットフォーム、CyRUSSを利用することもできます。インシデントが起こった場合、当社は顧客をフルサービスの復旧エコシステムにつなげます。これはITフォレンジックサービス、法務サービス、クレームサービス、そして評判管理の専門家からなり、最終的に顧客が自社の顧客のニーズに集中できるように支援します。

      顧客と共に継続的に進化し、共に適切なサイバーの保険引受能力を得て成長可能性を実現することが、当社のコミットメントです。

    規制変更がアジア中で勢いを増す

    様々な規制がリスク環境を形成しています。

    昨年、シンガポール個人データ保護委員会は、サイバー攻撃に関してこれまでで最高の罰金を課し、一方でベトナムは、当局にオンラインコンテンツのユーザーを調査する権限を与える法律を通過させ、中国は、より多くのサイバーセキュリティに関する法律を改正・導入しました。

    ヨーロッパで見られたように、GDPRの導入は企業のサイバーセキュリティに対する態度の変化を加速させました。厳しい法的要件と認識の増大が、大企業にも中小企業にも、サイバー保険へのリスク移転への投資を促しました。今年はインドで類似の厳しい法律が導入される見込みです。

    韓国は2020年に施行される強制サイバー保険を導入しました。また、タイの個人データ保護法は、5月からGDPRと同様の72時間データ漏洩通知義務を追加し、導入します。

    Munich Re エキスパート
    Giv Kahrom
    アジア地区シニアサイバーアンダーライター